
田舎の飲食は「価格」じゃない。「差」が出るのはここ
近年はチェーン店も増えて、田舎でも有名店を見かけるようになった。けど、個人店の“美味しい店”は、値段も味も店ごとに千差万別。
それに「田舎=和食だけ」って決めつける必要もない。海外の人に和食を紹介するのは魅力的やけど、今の日本の食が和食だけで成り立っているわけでもない。
都会なら、気になった店にすぐ行ける距離感がある。でも田舎は、良い店ほど“見つけにくい“のが現実。
だからこそ、なかなか見つけられない飲食の中から、キラリと光る店を少しずつ紹介していく。
初回に紹介するのは和食じゃない:生パスタ専門店「遊穂」
初回に紹介するのは「遊穂(ゆうほ)」や。片田舎にある生パスタ専門店。
昔は「パスタ=乾麺」が通例やったけど、今では生パスタを扱う店も増えてきた。とはいえ、生パスタを“スペシャリティ”にしている店は、田舎ではまだ珍しい。
「遊穂」は、そんな数少ない“片田舎のイタリアン”として、ちゃんと芯がある店やと思う。


予約必須の根拠:手作り麺は“売り切れ”が起きる
店内に入ると、優しい雰囲気の店主が迎えてくれる。
わしが行くときは、必ず予約を入れる。理由は単純で、初めてこの店に来た時、外に貼り紙が出ていたから。
「本日は予約された方分で麺が売り切れております。申し訳ございません。」
席数も多くはなく、麺は手作り。だからこそ、どうしても数に限りが出る。
もちろん今回も予約をして、席を確保してから訪れた。
注文の基本は“セット”:サラダから始まるのがいい
わしは“必ず”と言っていいほど、ここではメインのパスタに、サラダ・ドリンク・デザートのセットを付ける。
なぜかというと、サラダから始まって、メインのパスタを食べて、最後にドリンクとデザートで締める―この流れが、ささやかなコースみたいで気持ちいいから。
結果的に、それがいちばん満足する形になっている。

コースの入り口が強い:サラダで胃袋が整う
このサラダは、いくら食べても飽きない。
葉物野菜に、しめじ・カリカリベーコン・ナッツ・卵・パルメザンチーズ…と、いろいろ入っている。
ドレッシングはマッシュルームドレッシング。ひと口食べると、芳醇なキノコの香りがふわっと口の中に広がる。上品で気品のある味わい。
シャキッとした野菜、卵の甘み、パルメザンチーズのコク。そこにベーコンとナッツのカリッとした食感が重なって、華やかでおいしい。
「ここから食事が始まるで」という、好感触な“出だし”を飾ってくれるサラダ。
わしなら、バケツ一杯出されても食べられそうやと思ってしまう。
ボロネーゼで確信する:香り・濃度・麺のもちっと感
少しすると、店主が「おまたせしました。」の言葉と一緒に、トマトの良い香りを連れてきてくれる。
そう、ボロネーゼの登場。
ここで出てきたパスタは、「ロンブリケッリ」と呼ばれるイタリア中部の伝統的なパスタ。
香りに食欲をそそられてひと口食べると、ソースには肉のうまみがしっかり乗っていて、トマトソースとして申し分ない濃厚さがある。
嫌なトマトの酸っぱさが立つ感じではなく、次のフォークを進めたくなる味。
チーズの香りも良く、ボロネーゼにさらに深みが出る。
麺はもちっとしていて、乾麺にはない風味があるから、ソースとよく合う。
胃も心も満足する一皿。


食後の一撃:アイスコーヒー×レコード型コースター
ここの主人は、遊び心も忘れない。
食後にアイスコーヒーを頼むと、コースターがなんとミニレコード型。この演出が、妙にうれしい。
わしは音楽も好きやから、こういう“ちょっとした遊び”がある店は好きになってしまう。
ソフトドリンクの他にワインもあるようやけど、ハンドルキーパーの居ないわしには、ワインはもう少し後に楽しめる時期が来るのかもしれん。
いつかワインと一緒に、このパスタを味わえたら最高やろうな…と考えてしまう。
デザートはカッサータ:重たくないのに満ちる締め
デザートで運ばれてくるのは、ドライフルーツやナッツがぎゅっと詰まった「カッサータ」。
正式名称はカッサータ・シチリアーナというらしい。チーズと生クリームを使い、ドライフルーツとナッツを閉じ込めて冷やしたアイス。
わしもいくつか食べてきたけど、ここは濃厚なソースのパスタを食べた後でも「重い」とは感じにくい。
ドライフルーツがしっかり入っているから、口の中が爽やかなフルーツの香りで満たされて、後味がさっぱりする。
ナッツのカリッとした食感も良く、生クリームの少しもったりした口当たりと合わさって、食べごたえもある。
もう一つ食べたいと思うけど、単品で頼めないのが悔しいところ。

イタリア通が唸った。“これが日本のパスタだ”と感じさせる一皿
海外の友人を連れて実食してもらったところ、イタリアに何度も行く彼が「ここのパスタソースはイタリアの味とは違うのに、これが“日本のパスタソース”なんだと思わせるほど味わい深い」と唸り、さらにサラダのドレッシングについても「きのこの香りがすごく良くて食欲をそそる!」と絶賛、食後には初めて食べたカッサータを「シチリアに行くのに食べたことがなかったけど、これは食後に最高だね」と気に入ってくれて、最後に「連れてきてくれてありがとう!」と笑顔で言ってくれた。
